目の前で、あおちゃんの意識がなくなっていく。
ぐったりとして、ゆらゆらと揺れる体に、僕は力を振り絞って近づいた。


あおちゃん、ありがとう。来てくれて。
君の言っていた通り、僕はひとりじゃなかった。


いつだって、君が隣町から真っ先に駆けつけてくれて、真っ先に僕に手を差し出してくれた。


だから、今度は僕が。


やっと、恩返しができる時が来た。


ありがとう、あおちゃん。
君だけでも……。


意識のないあおちゃんに、ぎこちのないキスをする。


自分の中に残っていたわずかな酸素と共に、僕のあおちゃんへの想いを込めて。


届くように。この溢れすぎて止まることを知らない好きだという気持ちを全部。


自分の手を握るあおちゃんの指を、1本1本僕は解いた。


「ん……みどり……?」


あおちゃんが意識を取り戻したのを確認して、僕はホッとした。


さあ、さよならだ、あおちゃん。


「っ!?」


体を強く押し上げられ、あおちゃんは目を見開く。


覚悟をしていたのに、いざ、その時が来ると、やっぱり寂しくなってしまっていつもみたいには笑えない。


そんな僕に、精一杯腕を伸ばしてきて助けようとしてくれるあおちゃんの姿を、しっかりと目に焼き付ける。


出来るなら、あおちゃんの笑顔に見送られたかったけど、こんな状況ではさすがに無理か。


だから、せめて僕だけは、笑ってさよならするから……。