「助けて!誰かっ……!」


必死で助けを呼ぶけど、誰も来てくれない。


もしかしたら、僕はここで死ぬのかもしれない。
そう思ってしまった時だった。



「碧っ!!!」



……彼女は来てくれた。



このまま、誰にも気づかれることなく死ぬんだ。僕はやっぱりひとりだった。


そう思っていた僕の前に、あおちゃんはいつもみたいに現れて、何の迷いもなく川へと飛び込む。


「あおちゃっ……ダメだよ!危ない!」


「このままじゃ碧が溺れちゃうもん!!」


嬉しく思いつつも、僕が身を案じて慌ててあおちゃんを止める。でも、あおちゃんは構うことなく僕の元にやってきてくれた。


そして、僕の手をしっかりと握り、岸まで引っ張っていこうとする。


だけど、またあの濁流に邪魔をされ、僕が1番恐れていた事態が起きてしまった。


水の中で息ができず、もがき苦しむあおちゃん。
でも、それでもなお、僕の手を離そうとしない。


僕のことは置いていってくれていいから。
あおちゃん、お願いだから手を離してくれ。
仮に僕が助かったとして、それで君が死んでしまったら意味がない。


あおちゃんのいない世界なんて、僕にとっては、何の輝きのもない白黒の世界に過ぎないんだ。