可愛くて、でも、すごく正義感の溢れる子。
飛び降りようとしているように見えた僕のことを、真っ先に助けて叱ってくれて。
僕は、からかわれているクラスの子を助けたことでいじめられるようになった。助けたのは正直言ってただの偽善で、いじめられるようになった今ではその子を助けなければよかった、とさえ思ってしまっている。
だから、蒼唯ちゃんのまっすぐさが、まぶしくてたまらなかった。
「蒼唯ちゃんは強いんだね。僕は怖くて、ただ我慢するしかできないんだ」
今日もいじめられていた僕を、蒼唯ちゃんは迷わず助けてくれた。
蒼唯ちゃんの強さが羨ましい。
きっと蒼唯ちゃんなら、こんな奴らに負けないんだろうな。
そう思ったら、そんな皮肉っぽいことを言ってしまっていた。
「え?碧もめちゃくちゃ強いじゃん」
だけど、彼女は、平然とこう答えた。
何で?どういうこと?
理解ができない。
やられっぱなしで何もできないこの僕の、どこが一体強いというのか。
僕の疑問に答えるように、蒼唯ちゃんは笑顔で、
「碧は今までずっと一人で耐えてきたんだから。充分すごいよ。強い人じゃないとできないことだと思う」
この言葉が、俺はとてつもなく嬉しかった。
耐えることしかできなかったけど、それでもひとりであいつらと闘ってきたから。
ああ、ちゃんと見ていてくれる子が、わかってくれる子がいたんだ……。
ありがとうと伝えると、蒼唯ちゃんはそれから、僕の手を握り締めた。