「ソラ……!」
そこにいたのは、あたしと碧が、小学生の時あの川辺でこっそり育てていたあの捨て犬だった。
名前は、とても綺麗な青空の日に見つけたから“ソラ”。
「あのあと、蒼唯さんも記憶をなくしちゃったし、碧の忘れ形見とも言える存在だと思って、うちで引き取ったの」
縁さんが、ソラを撫でながら言う。
あたしは、大きくなったソラの前に座り、その温かさを噛み締めるようにぎゅっと抱きしめた。
あの時は、小学生のあたしや碧が抱いても腕の中におさまっていたのに。
ソラは、今や抱きしめられながらも、ぺろぺろとあたしの頬を舐めるほどの余裕っぷり。
「ふふっ、くすぐったいよソラ……」
身をよじりながら思わず笑う。
ソラはこれでもかというほどじゃれてくるから、それに目一杯応えた。
すごく楽しかった。
楽しくて、涙がこぼれた。
「ありがとうソラ……。あたしのこと、覚えててくれて……」
ソラは、あたしと碧の想い出を知る唯一の存在だ。
こうして生きていてくれたこと、あたしを覚えて待っていてくれたこと、それがどうしようもないくらい、泣けるほど嬉しかったんだ……。