碧の部屋にいただけで、少しの間、碧と一緒にいられたような感じがした。
「縁さん、ありがとうございました。じゃあ、あたしはそろそろ……」
下に降りて、キッチンで夕食の支度を始めていた縁さんにお礼を言う。
日も暮れてきている。だいぶ長い時間居座ってしまっていたらしい。
もう一度お礼を言っておいとまさせてもらおうとした時。
「あっ、ちょっと待って!最後にもうひとつだけ見せたいものがあるの!」
わざわざご飯を作る手を止めて、縁さんがパタパタとキッチンを飛び出してくる。
「ついてきて」
見せたいものというのは庭にあるらしく、あたしは縁さんに連れられるまま玄関を出て、庭へ回った。
その先で見たものは、またあたしの視界を歪ませた。
「ゆ、縁さん……この子……!」
縁さんが笑顔で頷く。
「覚えてる?碧が必死で助けようとしたこの子の命を、蒼唯さんが繋ぎとめてくれたのよ」
この毛並み。この毛色。
そして、この鳴き声。
「ワンワンッ!」
その子は、あたしを見つけると、勢い良く飛びついてきた。
あの頃よりは随分と大きくなったけど、わかる。
だって、あたしと会った時のこの喜び方が、昔と全然変わっていない。