しばらく泣いて落ち着いたあと、縁さんが碧の部屋に案内してくれた。


碧が生きていた頃のまま、綺麗に保たれている。


「ここが……碧の部屋……」


この部屋は、小学6年生で時が止まっているせいか、置いてあるおもちゃや漫画が高校生のあたしには子供っぽく感じる。


それでも、ここにあたしの知らなかった碧がたくさんいたんだと思うと嬉しくて、微笑ましくなった。


「私は下にいるから、ゆっくりしていってね」


気を利かせてくれたのか、縁さんは部屋を出て行き、あたし一人にしてくれた。


「碧……勝手にお邪魔させてもらったよ」


部屋の真ん中にちょこんと座り、もう一度、じっくり部屋の中を見回す。


特に何の変哲もない男の子の部屋。


机の上の教科書を手にとってみると、本人が言っていた通り勉強は苦手だったのか、暇つぶしに描いたであろう落書きがところどころに見られた。


でも、理科だけはやっぱり好きだったみたいで、どの教科のものよりも綺麗にノートが取ってあり、それに挟まっていた理科の小テストは満点だった。


今思えば、あたしが前に幽霊の碧に、また学校に通えるようになったら勉強を教えてねって言った時、碧はどんな気持ちで聞いていたんだろう。


そう考えると、さっきあんなに泣いたというのに、また涙がじわりと浮かんできた。


何も知らないで好き勝手言っていた自分を思い出すと、今でも自分に対して怒りが込み上げてくるけど、碧も、それから縁さんもあたしが自分を責めることを望んでいない。


だから、あたしもいい加減前を向こう。


過去ばかり振り返って後悔せずに、きちんと歩き出すんだ。