「助けてもらってたのは……あたしのほうなんです……」


あたしのせいで、碧が死んでしまったと伝えたら、縁さんはどんな顔をするだろう。今この優しい笑顔は消えるのかな。


それでもあたしは、意を決して話した。


碧と過ごした日々、碧の最期、記憶をなくしていた間のこと、そのあと幽霊になった碧とも過ごしたこと、全部。出会ってから今までのことをすべて。


縁さんは、時折頷きながら、あたしが話しやすいように終始優しい目を向けてくれていた。


「……縁さん。あたしが、碧を死なせてしまったんです。だから、恩人なんて言ってもらえる資格なんてないです……!」


震えそうになる声を絞り出して、最後まで話し終えた。


縁さんは、しばらく黙ったまま。
あたしは俯いているから、その表情まではわからない。


今目の前にいる人間によって我が子を奪われたのだから、咎められようが責められようが仕方ないことだと思う。


覚悟のうえだったんだけど、やっと口を開いた縁さんの言葉は意外なものだった。



「よかった……。あの子、何もできないまま逝ってしまったわけではなかったのね……」