お線香を上げ終え、黙祷も済んだところで、縁さんにリビングへと連れていかれる。


ダイニングテーブルに座らされると、目の前に紅茶とクッキーが出された。


「こんなものしかなくて悪いんだけど、よかったら召し上がって」


「いえ!お構いなく……」


「せっかく来てくださったんだもの。ゆっくりしていってね」


すぐに帰るつもりだったけど、そんなことを碧と同じ笑顔で言われてしまっては帰るわけにはいかない。


すみませんと言いつつ、ごちそうになってしまった。


「ずっとね、蒼唯さんと会いたかったの。碧の命の恩人だから、会ってきちんとお礼がしたかったの」


クッキーを頬張るあたしを見て、嬉しそうに微笑む縁さん。
あたしは口の中のものを急いで飲み込むと、慌てて首を横に振る。


「そんな!恩人だなんて!」


だけど、縁さんはにこにこと笑う。


「碧がいつも言っていたわ。『あおちゃんは女の子だけど、僕のヒーローだって』」


「そんなこと……」


そんなこと、ない。
いつだって助けてくれたのは碧のほう。
さいごのさいごまで……あたしに生きる道を示してくれた。


縁さんは、知っているのかな。碧の最期がどんなだったのか。
知っていて、あたしを三回忌に呼ぼうとしていてくれていたのかだろうか。