「ねぇ、碧。明日もここにいる?」
綺麗な空を仰ぎ見ている碧に、あたしは気づけばこんな質問をしていた。
碧は、少し目を丸くして驚いたような表情を浮かべたあと。
「うん、いるよ」
また、あのふんわりとした笑顔で言った。
「そっか。じゃあ、明日お昼頃ここに来るから」
「わかった。待ってるよ」
約束をとりつけたところで、あたしは「よし」と拳を固く握り締める。
「今日はもう帰るね。それで、お母さんにのんびり宣言してくるね」
“のんびり宣言”という表現が面白かったのか、碧は優しい笑顔を崩して、今度は無邪気な笑顔に変わった。
「大丈夫だよ。蒼唯のお母さんは優しい人だから」
「何言ってんのよ。あたしのお母さんがどんな人かなんて知らないでしょ」
冗談だと思って軽くあしらったあたしだったけど、その直後碧が悲しそうに微笑んだように見えて……。
「え……?みど……」
「じゃあ、また明日ね。蒼唯」
呼びかけようとしたあたしを遮るように、碧が右手をひらひらと振った。
そんな彼は、さっきの意味深な雰囲気ではなく、いつものふわっとした優しい笑顔に戻っている。
「う、うん。また……」
だからあたしも、その日は手を振って橋をあとにする。
「頑張ってちゃんとお母さんに言うんだよ。俺、ちゃんとここに居るから」
「……うん。ありがとう、碧」
本当にありがとう。
少し……心が軽くなったような気がするよ。