消えていく碧の体。
輪郭がぼやけて、抱き締めあっているはずなのに、あたしの背中は寒くて、あたしの腕も空気を抱きしめているような感覚。
それでも構わない。
だって、あたしにはまだ、大好きな碧の穏やかな笑顔が見える。
「大好きだよ、碧。
生まれ変わった姿でも、絶対見つけてみせるから。ずっと待ってるから……」
ぽたり、とあたしの頬に、温かい雫が落ちてきた。
碧の姿はほとんど消えかかっているけど、これは碧の涙なんだと直感的に感じて、あたしは自ら碧にキスをした。
きっと、重なったであろう、ふたつの唇。
だって、確かに熱を感じた。
「蒼唯……ありがとう、蒼唯。あの日、この場所で、君と出会えて本当によかった……」
「うん……。あたしも、碧に会えて、恋をして、本当によかった」
あたしの言葉を聞いて、碧は今まで見たことのないほどの嬉しそうな笑顔を浮かべる。
そのあと、綺麗な光が碧の体を包み込んで……。
“さようなら”
別れの言葉が聞こえたと同時に、光は青空へと飛んで行った。
その空に向かって、あたしは軽く手を振る。
たぶん、碧は笑顔で天国へと旅立って行けたと思う。
あたしも、不思議と涙は止まっていた。
悲しい気持ちや寂しい気持ちは全部碧が持って行ってくれたみたいで、あたしの心にあったのは、“また逢えるよね”という前向きな清々しい気持ちだけだった。