「……そろそろみたいだ」


碧の言葉通り、彼の体はどんどん薄くなっていき、透けてきた。


「……っ、うん」


あたしは、出来る限り口角を上げて、笑顔を作ろうと試みる。
でも、涙だけは止められなくて、どうしても顔が歪んでしまう。


「はははっ!蒼唯、変な顔〜」


「ちょっ!ついさっき、可愛いって言ってたじゃない!」


言い返すあたしの声はか細いうえに震えていて、まったく怒っているように聞こえない。


「じゃあ……ね……。みど、り……」


ちゃんとお別れしたいのに、うまく言葉が出てこない。
溢れ出る涙が、笑顔も声も、全部の邪魔をする。


滲む視界の中でかろうじて見えた碧も、泣いているような気がした。



「最期のお願い。
笑って、蒼唯」



ちゅっ、と小さく音をたてながら目元にキスをされる。
あたしの涙を吸い込むように数回それを繰り返したあと、碧は熱を帯びた目で見つめてくる。



「たぶん、俺は生まれ変わっても、
また君のことを好きになる」



最期にして、最高の告白。
それをもらったあたしは、きっと世界中の誰よりも幸せなのかもしれない。


たとえ、一緒に並んで歩く未来があたし達に待っていなくても。