「これで……
思い残すことはもうないよ」
え……。
未練がなくなってしまった今、碧がこの世に留まり続ける理由はもう、ない。
それは、わかっていたことだけど。
「そんな……やだよ!碧、また行っちゃうの?嫌だよ!」
碧の腕をこれでもかというほど強く掴む。その腕に爪が食い込んでしまいそうなほど強く。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そういうわけにはいかないよ。もともと、俺はここにいるべき存在ではないんだ」
碧は、淡々と話しているように聞こえなくもないけど、さっきよりも悲しそうな目をしている。
でも、あたしはひかない。
「また行っちゃうなんて嫌だよ!行かないでよ碧!だって……」
本当は頭ではわかっているんだ。こんなわがまま言っても仕方ないことぐらい。
いくら泣き叫んだところで、碧が生き返るわけでもなくて、かといってこの場に留まらせておくのは誰よりも碧に良くない。
あたしがすべきことは、笑って、「ありがとう」って言って、碧を天国へ見送らなければいけない。
わかっているんだ。
でも、そう簡単に割り切れない。
だって……。
「あたしも、ずっとずっと、碧のことが好きだったんだからぁっ……!!」
生きていた頃の碧も、幽霊になった碧も。
たぶんきっと、小学6年生のあの日に初めて出会った時に、あたしは彼に恋をした。