「蒼唯っ!!」
珍しく碧が声を荒らげたかと思うと、その直後、あたしの腕をグイッと引っ張る。
勢い良く引き寄せられたあたしは、碧の腕の中にすっぽりと収まり、強い力で抱きしめられた。
「違うって言ってんだろ……」
今まで聞いたことのない男らしくて強い口調だったけど、温かく感じるのは変わらない。
「君は、自分の大事な記憶を閉じ込めてしまうほど、無意識にこの4年間自分を責め続けていた。蒼唯のせいなんかじゃないのに。だから、もう充分なんだよ……」
「碧……」
あたしは碧の背中に自分の腕を回し、彼の力と同じぐらいの強さで抱きしめ返した。
体温はもうないのに、それでも優しい温もりを感じて、止まりかけていた涙がまたこぼれる。
碧の胸を濡らしているのがわかったのか、なだめるようにあたしの頭に大きな手が触れた。
「蒼唯。俺が、幽霊になってまでこの世に留まっていた理由はね、君に伝えなきゃいけないことがあったからだよ」
いつもの穏やかな口調に戻った碧が、あたしの顔を覗き込む。
「……未練ってやつ?」
鼻をすすりながら聞くと、「そんな感じ」と碧は苦笑した。
「あの時、迷わず俺を助けてくれて、ありがとう。すごく嬉しかったよ」
ふわりと笑う碧。
そのあと、「それから……」と続けると、あたしの唇に軽く口づけた。
「好きだよ。
生きてた頃も、死んでからもずっと。
蒼唯、君のことが大好きだった」