「ごめん……ごめんね、碧……」


あたしは、碧を助けることができなかった。
助けるどころか、最後は助けられてしまった。


あたしが飛び込んだりしなかったら、もしかしたら碧は死なずに済んだのかもしれない。


そのうえ、そのことを忘れてなかったことにして。


そればかりか、碧が自分を犠牲にしてまで救ってくれた命を、3ヶ月ほど前のあたしは、粗末にしようとしていたのだ。


自分が許せなくて仕方がない。
そう思えば思うほど、涙が次々と溢れて止まらなかった。


あたしのせいで、碧は……!



「違うよ、あおちゃん」



碧が言った。


昔の呼び方に驚いて、涙が止まる。


碧は、うずくまっていたあたしの背中を二三度撫で、それから抱き起こした。


「自分を責めないで。蒼唯は、生前の俺を何度も助けてくれたでしょ?」


「そうかもしれないけど……」


それでも、あたしを水面に押し上げた碧の手の強さが、あたしの体にまだなんとなく重く残っているような感じがする。


「碧をあんな目に遭わせたのは、あたしなんだ……!」


捨て犬をあんなところで飼わなければ。。
学校帰りに毎日遊ぶほどの仲にならなければ。
あの日あの場所で、出会っていなければ……。