土手を駆け上がり、お母さんのところに向かうあたし。碧もゆっくりとそのあとを追う。
『今日は出かける用事があるから早く帰りなさいって言ったでしょう』
『あ!そうだった!』
ランドセル以外の手荷物を、お母さんが代わりに持ってくれる。
すると、お母さんが碧に気付いた。
『あら、お友達?』
『うん!碧っていうの!』
『空河碧です』
ぺこりとお辞儀して、礼儀正しく挨拶する碧に、お母さんも少し体を屈ませて目線を合わせる。
『蒼唯の母です。いつも蒼唯と仲良くしてくれてありがとうね』
にこっと笑うお母さん。
そのあと、帰るよ、と言われながらあたしは手を引かれていく。
まだ碧と遊びたかったのか、少し寂しそうにしながらあたしは碧に手を振る。
すると、碧があたしを呼び止めた。
『あの!これからは僕も、蒼唯ちゃんのこと、あおちゃんって呼んでもいい?』
あたしは少し頬をピンク色染めながらも、嬉しそうに笑って頷いた。
それを見て、脳裏に幽霊の碧と初めて会った時のことがよぎる。
初めて会ったはずだったのに、“あおちゃん”と一発であたしのあだ名を言い当てたのはこのことがあったからだったんだね……。