『えっ……』
ガシャガシャとランドセルを鳴らしながらやってきたかと思えば、その女の子は碧に突撃していった。
『うわぁっ!?』
『早まっちゃダメぇ!あんたにはまだ明るい未来がいっぱい待ってるんだから!』
『へ?ええっ!?』
碧の背中に抱きついて、グイグイと引っ張る女の子。
あれ……この光景……。
あたし、知ってる。
ズキンと小さな頭痛が走る中、二人の様子を見守っていると、碧が少し顔を赤くしながら大きな声をあげた。
『だっ、大丈夫だよ!僕は別に飛び降りようとしてたわけじゃないから!』
『え』
碧の言葉を聞いた女の子は、ぴたりと動きを止めると、急に恥ずかしくなったのか慌てて碧から離れる。
『ごっ、ごめんなさい!勝手に勘違いして……』
真っ赤になりながら謝る女の子に、碧はあの陽だまりみたいな笑顔を向けた。
『いいよ。だって、僕を助けようとしてくれたんでしょ?』
微笑みかけられ、女の子はさらに顔を真っ赤にして俯いた。
ああ、やっぱり。あの笑顔、覚えてる。
あの女の子は……。
『君、名前は?』
碧に問われ、女の子は恥ずかしそうに答える。
『かわはら あおい……』
そう。あの子は、小学生の頃の“あたし”だ。
この場面は、あたしと碧が本当に初めて会った日の時のことだ。