殴られ蹴られ、ボロボロになった姿をゲラゲラと笑い者にされる。


一目見ただけで、いじめだとわかった。


『今日はこのぐらいにしとこーぜ』


飽きてしまったのか、いじめていたうちの1人がつまらなそうにそう言った。


他の男子たちも同意して、それぞれの家へと帰って行った。


抵抗すらしないでひたすら耐えて、傷だらけになってしまった小さな碧を置いて……。


“碧、大丈夫?”


これは、幽霊の碧があたしの為に見せてくれている生前の記憶なのだとわかってはいるけど、思わずそう声をかけてしまいそうになった。


しばらく地面に倒れ込んでいたままだった碧は、涙を拭いながらむくりと起き上がり、どこかへ歩き出す。


擦り傷だらけの両足を動かして、向かった先はあたしもよく知るあの〇〇町と××町を繋ぐ橋だった。


『はぁ……』


手すりをつかみ、川の遠くのほうを眺めながらため息をつく碧。


『クラスの女の子がからかわれてたから、僕はそれを良くないと思って助けただけなのに。どうして、こんなことされなきゃいけないんだ……』


そうつぶやいた矢先。


突然あたしが住む町の方から小さな女の子が、赤いランドセルを揺らしながら走ってきた。


『あんた、何してんのーーー!!』


ものすごい形相で、そんなことを叫びながら。