手紙はそれだけの短いもので、最後は“それでは待っています”という一文のあとに“空河 縁”と、やっぱり綺麗な字でしめられていた。
手紙を握る力が強くなると同時に、あたしの足取りも速くなっていく。
あれほど会いたくないと思っていたのに、今は早く、一秒でも早く碧に会いたくてたまらない。
いや……会わなきゃいけないんだ。
会って、彼がこの世から消えてしまう前に、ちゃんと伝えなくちゃいけないことが、あたしにはたくさんあるんだから。
走って、走って、とにかく走って。
橋が遠くに見えてきた。
朝早くて、あたりには人の気配はまったくない。実際に誰一人としてここにはいないんだけど。
あたしの大好きな人は、まぎれもなくここにいると思ったから。
「……すぅ」
大きく息を吸って、近所迷惑なんてこれっぽっちも考えずにあたしは叫んだ。
「みーどーりーーーーっ!!!」