そのあと再び眠れるわけもなく、朝日がのぼるまであたしは一睡もできなかった。


碧の名前を口にした時のお母さんの顔が忘れられない。


驚きと戸惑いと、そして少しの恐怖。
そんな、なんとも言えない表情だった。


『な、何を言っているの蒼唯……。だって、だって碧くんは……!』


お母さんがあんなふうに取り乱すのも無理はない。
あたしだって、まだ信じられないんだもん。


でも、記憶はまだ取り戻してはいないけど、あの夢の光景がかつてのあたしの記憶の一部で、聞こえたニュースも実際にあったものだったとしたなら、辻褄が合ってしまう。


だから、あたしは行く。
本人から直接、本当のことを聞いてくる。


簡単に出かける支度をして、あたしはリビングに書き置きをしていく。


【ちょっと出かけてきます。すぐ戻るから】


そして、早朝の町へと飛び出した。


右手には、あの手紙を握り締めて。



【川原 蒼唯さんへ


お久しぶりです。お元気ですか?
今日はお知らせがあって、手紙にてご連絡させて頂きました。


碧の……三回忌のご案内です。


あの子が亡くなってから、いつの間にか三年が経っていました。時の流れというのは本当に早いものですね。


よろしかったら、蒼唯さんも来てください。
そのほうが碧も喜ぶと思うので。】