『みーどーりー!また来たよー!』


そう言って、赤いランドセルを背負った女の子が、どこかの川の土手に座っている男の子に声をかけた。


あれ……あの女の子、あたしの小さい頃に似てる。
この川の風景も、不思議と見慣れた景色にかんじる。


それに、“みどり”なんて。


『あおちゃん……おかえり』


『ただいま!』


穏やかな笑みを浮かべた少年が口にしたあだ名は、あたしと同じものだった。


どういうことなの?
“みどり”って、あの“みどり”?
“あおちゃん”って、まさかあたしのこと?


というか、これは何?
あたしは何を目の当たりにしているんだ?


『あー!ケガしてる!今日もやられたの?』


土手へと降りた“あおちゃん”が、“みどり”の頬の傷を指さして言った。


苦笑する“みどり”からは、あたしの知る“碧”とまったく同じ温かさを感じた。


『もうっ、みどりもたまには仕返ししてやらないとさー!だから、次もやられちゃうんだよ!』


『んー、でも僕が我慢すれば済むことだし、仕返ししてさらに怒らせちゃったら怖いし』


怒りを露にする“あおちゃん”とは対照的に、“みどり”は、たれ目をさらにふにゃっと下げて柔らかに微笑んだ。