空河なんて名字なかなかないから、この人は碧の家族の人だと思う。
それが間違いじゃなければ、亡くなった人も碧の関係者ということになる。
それだけならまだ、碧の家族や親戚の人が亡くなってしまったのかなと思うだけで、こんなに嫌な胸騒ぎもしない。
でも、そうじゃないのは、きっとこの三回忌の案内が、まったくの他人であるはずのあたしの元に届いていることが問題なのだ。
あたしは……空河と名乗る人に会ったのは、今年、碧が初めてのはずで。
だから、去年に空河という人からわざわざ手紙をもらうなんて有り得ない話なわけで……。
『俺たちは一度会ったことがあるから』
――ドクン。
初めて会ったはずのあたしに、そういえば碧はこう言っていた。
でも、あたしにはあの日よりも前に碧と会った記憶なんてまるでなかった。
もしかすると、お母さんの言っているあたしの戻っていない記憶というのは、碧と初めて会った“本当の日”のことなのだろうか。
だとしたら、それを思い出せば……この手紙があたしに送られる理由も、碧が学校には行かずにずっとあの川にいる理由も、全部わかるかもしれない。
わかるかもしれないけど、わかりたくない。
だって、真実へと繋がるであろうパズルのピースたちは……最悪な事実へと導かれてしまう、あたしにとって地獄みたいなパズルになっているかもしれないから。