いつもなら、ここの分かれ道を右に行く。
家とは逆の、隣町に続く道を歩いていけば、あの川が見えて、橋が見えて。


穏やかに笑う碧が見える。


きっと、急に現れなくなったあたしのことを、碧は心配してくれているかもしれない。


でも会ってしまったら、嫌でもあの言葉を思い出してしまって、「どういう意味だったの?」って知りたくなくても聞いてしまう自分がいて、それに対して碧がどう答えるのか。


まったくわからないから、怖くて、この分かれ道をここ最近は毎日左に曲がってしまっている。


せっかくいじめというあたしの最大の問題が解決したから、これからは心置きなく碧と一緒に過ごせる。何なら碧が学校へ行けるように手伝えるって。そう、思っていたのに。


やっと、好きだよって、伝えられると思っていたのに。


あんなこと言うから……。


俯きながら歩いていたけど、毎日の通学路は体が覚えているみたいで、気がつくと家の前に到着していた。


「ただいま……」


とりあえず、一旦考えることはやめて、なるべく元気な様子を装いながら中へと入る。


いじめはなくなったのに、いつまでも浮かない顔をしてたらお母さんに今度は何があったんだろうって心配かけちゃうもんね。