「今日も行かないの?碧くんのところ」


授業が終わり、帰り支度をさっさと済ませるあたしに美空がそんなことを聞いてきた。


「うん……」


会いたい気持ちは山々だけど、会った時に本当に別れを告げられてしまうかもしれないと思うと、怖くてどうしようもないんだ。


「“碧くん”って、蒼唯の彼氏の?」


「かかか、彼氏なんかじゃないわよ!」


あたし達の会話を聞きつけて、清水さんが楽しそうに割って入ってきた。


「清水さん!」


そう言った美空に、清水さんが面白くなさそうな顔をする。


「……名前で呼んでって言ったでしょ、美空」


「あ……」


顔を赤くする2人。


「よ、佳乃(よしの)ちゃん……」


照れ笑いしながら、美空が清水さんの下の名前……“佳乃”と呼んだ。


「それでよし!」


呼ばれた本人も恥ずかしかったのか顔を赤くしていたけど、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべる。


お互いの名前を呼び合うその微笑ましい様子に、あたしも思わず笑顔になった。