「あのね、碧。あたしが頑張れたのは、碧がずっとそばで見守ってくれてたからで、碧がずっとあたしの味方でいてくれたからで……」


「違うよ、蒼唯」


優しい動作で、あたしの頬に手を添える碧。


「俺が居たところで、どこまで頑張れるかは人それぞれだ。いじめられていた子を助けて、いじめていた子まで助けて、クラスのみんなまで変えられたのは、やっぱり蒼唯……君自身の力だよ」


碧……?


こつん、とあたしの額に碧が自分の額をくっつける。
一気に近くなる距離に鼓動が驚くほど早くなる。


でも、何だろう。


こんなに近くにいるのに、
触れ合っているのに、
このまま……キスだって出来てしまいそうな距離にいるのに、


それなのに。


「やだ……。どうしたの、碧……」


さっきまであんなに喜んでくれていたのに。


今はどうして、こんなにも悲しそうに笑っているの?


不安になっていくあたしの心がわかったのか、碧はあたしを抱き寄せると、安心させるように背中を撫でる。


そして……。



「もう、俺がいなくても大丈夫だね」



耳に届いたのは、別れみたいな言葉。


碧の声は小さくて聞き取りづらかったから、もしかしたらあたしの聞き間違いかもしれない。


そう思って「なんて?」と聞き返すと、碧は体を離してあたしに微笑みかけて言った。



「蒼唯、君は、ひとりじゃないから」



いつも、あたしを励まし続けてくれたお決まりのセリフ。


でも今日のそれは、悲しそうで寂しい響きだった……。