その日の帰り道。
いつものように碧のもとへ向かう足取りは驚くほど軽かった。
「碧ー!」
土手のほうに碧の姿を見つけて、あたしはバタバタと駆け寄る。
その足音にあたしだと気づいた碧が振り返った。
「碧っ!」
名前を呼ぶと、碧がパッと笑顔を見せてくれる。
その直後、何故か慌てたような表情になり、碧はあたしめがけて走ってきた。
「蒼唯っ!」
気づいた時にはもう遅く、あたしは足を滑らせて転びそうになった。
「きゃっ……」
――フワッ。
このあと来るであろう衝撃に備えて目を強くつぶったあたしだけど、全然痛みがやってこない。それどころか、何か温かい物に包まれている。
おそるおそる目を開けると……。
「大丈夫?蒼唯」
心配そうな碧の顔がそこにあった。
どうやら、転びそうになったあたしを抱きとめる形で助けてくれたらしい。
「あ、ありがとう……」
「よかった。怪我なくて」
ふわりと微笑みかけられ、あたしの顔は一瞬で熱を帯びる。
そうだ……。
あたしは何度も、こんなふうに碧に助けてもらってたんだよね……。
「蒼唯?」
「あのね碧!」
あたしは、碧の背中に自分の腕を回して、抱きしめ返す。
そして、笑顔で今日あった出来事を話し始めた。