「だって、君と俺は前に会ったことがあるから」



碧はにっこり笑って言ったけど、あたしにはまったく覚えがない。
自分では記憶力はいいほうだと思ってるし、あたしのあだ名を知ってるくらいの仲の相手ならそう簡単には忘れないはず。


でも、碧とは今日会うのが初めてだと思う……。


「無理に思い出そうとしなくていいよ」


考えることをやめさせるかのように、碧がふんわりと言った。


「……ごめん」


「ううん、気にしないで。まあ、“あの時の俺”と“今の俺”じゃ絶対わかんないと思うし」


確かに、前に会ったと言われても、それが随分昔のことだったりしたら、碧の外見もだいぶ変わっているだろう。思い出せなくても仕方ないかもしれない。


「蒼唯とあおちゃん、どっちで呼ばれたい？」


「別に……どっちでも」


「じゃあ、いきなりあんまり馴れ馴れしいのもあれなので、とりあえず蒼唯で」


呼び捨てもそれなりに馴れ馴れしいんじゃないか？まあ、いいけど。


でも前に１回会ったことがあるのか……。どこでだろう？


まあでも、碧も気にしないでって言ってくれてるし、ゆっくり思い出していけばいっか。