「あいつね、須藤さんのことが好きだったのよ。でも、周りにそれを知られたくなくてあえて嫌な態度をとっていたの。あの時の言葉は、私をからかったりしたかったんじゃなくて、須藤さんに気持ちを悟られないようにって思わず口にしてしまった言葉だったの」
そうだったんだ……。
清水さんの言葉に少し驚く。
例の男の子は、てっきり美空のことをよく思っていなかったのだと思っていたから。
美空本人もそうだったみたいで、初めて知ったこの真実に取り乱し……。
「え……ええぇっ!?」
たちまち顔を真っ赤にして、美空は声をあげた。
それを見て、清水さんはおかしそうにふふっと笑った。
「あのあとね、私は彼に告白したの。そしたら、『実は須藤が好きだったんだ』って言われて振られたの。でも、最後まで素直になれなかったうえに余計なことを言っていっぱい傷つけたって、悔やんでたわ」
美空はなんて返したらいいか戸惑っているのか、決まりが悪そうに目線をさまよわせている。
「私はそれが悔しかった。何で須藤さんなんかを……って。だからそのあとから今までこんなことをしてしまった。ただの八つ当たりだったの。だから、謝るべきは私のほう」
清水さんはゆっくりと立ち上がり、美空に向き直ると、その頭を下げた。
「今まで、本当にごめんなさい」