「清水さんっ!」


美空がコーヒーを頭からかけられたあの体育館裏。


そこに、清水さんは一人で膝を抱えて座っていた。


あたし達に気づくと、清水さんはゆっくりと顔を上げる。泣いていたのか、その目は赤かった。


「……何の用?」


抑揚のない声。美空は緊張しているのか「えっと、その」と無意味な言葉を繰り返す。


あたしが背中を軽く叩くと、美空はやっと落ち着いた。


「し、清水さん!あの、中学の時、私のせいで好きな男の子にからかわれてだよね。私のことが気にくわなかったのって、多分そのことが原因なんだよね。だから、その、ごめんなさい!」


途中詰まりながらも、美空は最後まできちんと自分なりに言葉を紡いだ。


清水さんは驚いたような表情を見せたあと、顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


「何それ……別に須藤さんのせいじゃないし」


清水さんの言葉に、「でもっ」と美空が返す。


「須藤さんさ、あいつに嫌われてるって思ってたでしょ」


“あいつ”?
首を傾げたけど、話の流れ的に、すぐに清水さんが中学の時に好きだった例の男子のことだろうとわかった。


何でそんなことを聞くんだろう、といった不思議そうな顔の美空がこくりと頷いた。


それを見て、清水さんは自嘲気味に笑った。