「やっていないのね?」
澤田先生が、優しく確かめるように美空に問いかける。
それに、美空は必死で首を縦に振った。
「あたしに、毎日ノートのコピーをくれたあんなに優しい美空が、不正なんてできるわけがないありません」
あたしも、先生の目をまっすぐ見据えて訴えた。
すると、先生は優しい笑顔を浮かべて、頷く。
「わかったわ。あなたたちを信じる」
先生……!
思わず笑顔になるあたし。
美空もホッとして緊張が緩んだのか、ずっと目に溜めていた涙をこぼす。
「ありがとうございます……!」
先生に頭を下げる美空を見て、清水さんは心底恨めしそうな顔で下唇を噛んでいた。
そして、珍しく取り乱したのか、大声で叫んだ。
「なんでなの!? 何で、皆美空の味方ばっかり……!どうして!?」
清水さん……?
取り巻きたちも、何が何だかわからないといった様子で目を丸くしている。
あたしの頭の中で、また碧に言われた一言がよみがえった。
“あとは蒼唯たちをいじめている清水さんを 助けてあげるだけだね”
苦しんでいるの?あの清水さんが?
助けを必要としているの……?
清水さんは、悔しそうに顔を歪ませて飛び出していくと、今日はそのまま教室に戻ることはなかった……。