しばらくは騒がしかったクラスメイトたちも、成績に入るとわかっているからか、真面目にテスト勉強をし始めた。
静かな教室に、シャープペンシルを走らせる音だけが響く。
えーと、テスト範囲の単語はこれだから……とりあえず3回ずつぐらい意味と一緒にノートに書いたら覚えられるよね。
黙々と単語を書き続ける途中で、シャープペンシルの芯がポキッと折れてしまった。
すると、それと同時にこの静寂を破った生徒が、1人。
「ねーねー、須藤さん?」
……!!
清水さんの声だった。
呼ばれた美空が、びくりと肩を跳ね上がらせて、清水さんのほうに顔を向ける。
「ななな、なに……?」
恐る恐る返事をすると、清水さんは意外な言葉を口にした。
「この単語の意味がわからないんだけど、教えてもらえる?辞書、今日忘れちゃって」
ニコニコしながら、自分の席まで来るように美空に手招きする清水さん。
ただ、普通にわからないところを頭のいい子に聞いているっていうだけの場面。どこの学校でもよくあるだろう1コマ。
でも、あたしの心臓はうるさかった。
今までしばらく何もしてこなかったいじめの首謀者が、その対象である美空に助けを求めるなんて、何か企んでいるに違いない。
でも……本当にわからないところを聞いているだけという可能性も否定できないのも事実。
美空もそう思ったのか、ビクビクしながらも清水さんのもとまで答えを教えてあげに行った。