「その人はね、クラスでも結構モテる人で清水さんもその男の子のことが好きだったんだ」
「それで……?」
続きを促すと、美空は一度あたしに苦笑をしてみせてから、一息ついて言った。
「その子ね、頑張って勉強してた清水さんに向かって、『清水、須藤なんかに勉強教わるなんてダッセー』って言ってきたの」
清水さんがひどく傷ついたということは、容易に想像することができた。
こんな言葉を好きな人から言われてしまったら、なんて考えるだけで嫌だ。
「それ以来、清水さんは私に対する態度が豹変しちゃったんだ。たぶん、私のせいで恥ずかしい思いをしちゃったからだと思う」
「今思い出してみると、私がいじめられちゃうのは仕方のないことだったのかも」と、美空は悲しそうに笑う。
あたしは美空のその言葉に対して、必死で首を横に振った。
「それは、美空は全然悪くない」
悪いのはその男の子だ。
美空のことを蔑むみたいな発言とか、清水さんを馬鹿にしたような一言とか、悪気がなかったとしても酷すぎる。
その男子に対して、あたしは話を聞いただけにも関わず、最悪な印象しか持てなくなった。
とにかく、いじめられる理由があるのはわかったけど、美空は何も悪くないということだけはわかる。