屋上へと続く扉がある階段のところで、あたしと美空はそのあとの授業を全部サボることにした。


ここは人気がないから、誰にも見つからない。
本当は屋上に行きたかったところだけど、うちの学校の屋上は立ち入り禁止で鍵がかけられているから無理だった。


仕方無しに、階段に腰を降ろし、涙を必死にこらえている美空の背中をさする。


「よく我慢したねー。もう泣いていいよ。あたししかいないなら」


「うっ……う、ん……」


ポンポンと背中を撫でていると、次第に美空の口から嗚咽が漏れて、鼻をすする音が聞こえてきた。


「勉強ぐらいしか取り柄がないのはわかってたけど……あんなふうに笑い者にされちゃうなんて……!」


「うん、そうだよね。ひどいよね」


珍しく愚痴をこぼす美空。
相当応えていたらしい。


「うわぁぁん!蒼唯ちゃぁぁん」


美空が、あたしに抱きついてきて、さらに一際大きな泣き声をあげた。


「大丈夫。美空は何にも悪くないよ」


よしよし、と頭を撫でて落ち着かせようと試みる。


あたしの服が美空の涙で濡れていくのを感じながら、あたしは心の中でうぶやいた。


碧……。
こんなに傷つけられた美空の姿を見ても、碧はまだ、清水さんたちを助けてあげなきゃって言うの……?