職員室で、先生にスリッパを借りたあと、2人で教室へと向かう。


その間も、美空とあたしはずっと無言だった。


でも、このままじゃいけないと思い、あたしは意を決した。


「美空」


立ち止まるあたしに気づいた美空は、同じように足を止めてあたしのほうを振り返る。


「昨日は、その……きついこと言っちゃって、ごめん……なさい!」


勢いでそう言って、あたしはその勢いのまま頭を下げた。


「あたしは、清水さんたちの思う壺にハマりたくないとかそういうのがすごくあって、負けず嫌いっていうか。だから美空にもあんなこと言っちゃったけど、だからって美空にも自分と同じようにすることを求めちゃうのは間違ってるよね。……だから、その、ごめんなさい」


もう一度ちゃんと頭を下げて言う。


すると美空は、あたしがそうしたようにあたしの額を指で下から持ち上げるようにして顔を上げさせた。


「美空っ……」


「私の方こそ、ごめんなさい。私も嫌なこと言って、蒼唯ちゃんのこと傷つけちゃったかなって思って。あんな言い方するつもりなかったんだけど……」


「ごめんなさい」と頭を下げて言ったあと、顔をあげて美空は微笑んだ。



「蒼唯ちゃんと、スリッパお揃い、嬉しいな」



右足を少し上げてスリッパを見せる美空。
本当に嬉しく思ってくれてるのが見てわかる笑顔だった。


「あたしも!お揃い嬉しい!」


自然と顔が綻び、あたしも左足を上げる。


ペタペタと音を響かせながら、2人で笑い合いながら教室へとまた歩き出した。