──そして、その日はやってきた。
閉店まで流れている音楽も終わり、お客さんもみんな帰った。
出入口の鍵もしっかり閉め、今、このスーパーにいるのは俺と藤野ちゃん、そして伊藤ちゃんの3人のみ。
事務所の監視カメラで、藤野ちゃんが伊藤ちゃんのもとへ向かうのを確認すると。
俺は慌てて事務所を出てバックヤードを飛び出し、売り場へと繰り出した。
そう。
藤野ちゃんの告白を覗き……見守るために。
青果コーナーで伊藤ちゃんがてきぱきと仕事をしているところに先回りし、陳列棚の陰に隠れる。
そして、ちょっとしてから藤野ちゃんがやってきた。
「伊藤さん」
4時間の接客のあとで少しかすれた藤野ちゃんの声が、静かな店内に響いた。
「はい」
何も知らない伊藤ちゃんは、仕事をする手を休め、藤野ちゃんのほうを振り返る。
よーし、頑張れ藤野ちゃん!