それにしても、モテるなぁ藤野ちゃん。
まあ、わからなくもない。
俺ももう少し若くて、妻子持ちじゃなかったら藤野ちゃんを狙っていたかもしれない。
「俺は藤野ちゃんのしたいようにすればいいと思うよ。行きたいと思うなら行けばいいし、行きたくないなら断ればいいし」
まあ、上司の誘いをアルバイトが断るなんてすごい話だけど。
「……そっかぁ……。そうですよね……」
俯いて考え込む藤野ちゃん。
きっと、伊藤ちゃんのことを考えてるんだ。
「私……お断りすると思います」
あらら、もう結論出しちゃうの。
別に、鈴木くんにしなよ、と言いたいわけじゃないけど、いろんな男を知っておくのもいいと思う。
「まあ、どっちでもいいけど、一晩ゆっくり考えてみたら?」
「でも……。……わかりました」
優しく笑うと、藤野ちゃんも苦笑して「お先に失礼します」と帰っていった。