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「あ、おいしい。このコーヒー」
…入ってきた瞬間、すごく綺麗な人だと思った。
いい匂いがして、笑顔が上品で。
窓際の席について、一人で窓の外を眺めている姿も絵になっていた。
あの人、すっごいきれいじゃない?
OLさんかな?
なんて囁き合うバイト仲間の女の子たちも、十分に可愛い。
だけど、そうじゃなくて。
なんというのか、独特の雰囲気、たたずまいだった。
自由で。
自分に自信を持っていそうで。
なんだか、その雰囲気が羨ましくもあった。
注文されたコーヒーを運ぶと、彼女はすぐにその場で一口飲んだ。
…そして、はじけるような笑顔を見せて。
いとも簡単に俺の心を奪った。
「なにこれ。すごくおいしいんだけど。どこの豆使ってるの?」
「店長が直々にブラジルから仕入れてきた上等な豆なんですよ」
「へぇ」
「良かったら」
――また、来てください。
そこからすべては始まった。
でも、そう思っていたのは、俺だけだったのかもしれない。