小声でそう呼びかけても、むなしくコール音が響くだけだった。
イライラと。
心配と。
どうしてだか、何に向けてかはわからないのに、嫉妬心。
何かがわからないから余計にイライラする。
――なんで、マリナさんなんかに夢中になるのよ。
しかも、本気で。
昨日もおとといも散々言ったのに。
自分が本気にされてないことも知らないで。
私は傘を差しながら、軽く走るようにしてマリナさんの会社に向かった。
走るせいで体が揺れるから、結局傘を差していても濡れるし、水たまりが跳ねて
靴下がずぶ濡れ。
それでも、理由のない衝動に駆られていた。
どうして、こんなボランティアみたいなことしてるんだろう。
自分の母親の愛人相手に。
まだ、知り合って三日目の相手に。