急いで携帯を取り出す。
でも残念なことに、蒼ちゃんの携帯番号を知らないことに気づいた。

…そりゃそうだ。
知るほどの仲でも、ないし。



「…私が行くことじゃ、ないか」


ぼそっと独り言を呟いた。

…なんで、わざわざ私が。
蒼ちゃんが勝手にしてることだし。
マリナさんが勝手にしてることだし。

いつだって私は、勝手に巻き込まれてるだけでいい迷惑。
私にはなんの責任もないし関係もない。

いい大人が、私よりもずっと子供で、本当に迷惑。




そう考えて、一度は携帯を閉じた。



…でも。




――ザー……ザーー…!



雨の音は全く手加減する気配がない。

小さく雷らしき音まで聞こえる。



「……ああ、もう!」



…なんで私が!!



仕方なく、マリナさんの会社の住所を取り出す。

そして、お気に入りの傘を手にして、再びマンションを出た。