そしてもちろん、それはろくなことじゃない。


「冗談じゃないんですけど」


私はため息を吐いて、鋭い目でマリナさんを睨みつけた。
いったい、どこまでフリーダムにすれば気が済むんだこの人は。

デートだろうが残業だろうが、一応仕事はちゃんとしてるんだから、好きにしてくれればいい。
でも。


「あんな犬を勝手に連れ込んでおいて」

「犬?」

「三木蒼太のことよ」


そう言うと、マリナさんは「ああ、蒼ちゃん!」と頷いてから、くすくすと笑い始めた。
いつもそう。
私がどれだけ睨んでも、説教しても、マリナさんはどこ吹く風。

「犬っぽいよねぇ。確かにねぇ」

「マリナさんの恋人なんでしょ。自分で管理してよ。同居なんてごめんだし。私関係ないのに」



そうバシッと言い放つと、マリナさんは大きな目をさらに大きくした。
長いまつげで、瞬きを数回。


そして…



「えぇ?恋人じゃないわよ」



…と、驚いたように答えた。


驚きたいのは私だった。



「……は?なんて?」