そう聞くと、一瞬蒼ちゃんは口をつぐんだ。
そして私から目を逸らして、空のほうを向いたまま、「18時までだけど」とボソッと呟いた。
「…でも、ちょっと遅くなるかも」
「雨が降る前に帰りなよ」
「うん。気を付ける。…あ、じゃあな」
トイレから出てきた先輩がこっちに向かってくるのが見えて、蒼ちゃんは軽く微笑んで去っていった。
入れ替わりに先輩が戻ってきて席に着く。
少し話していた程度じゃ、蒼ちゃんと私が知り合いであることはわからなかったみたいだった。
「もう来たんだ、早かったな」
「早かったですね」
私はそう笑いかけて、コーヒーのカップを持った。
香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
湯気が立っていたから、ゆっくりとゆっくりと、口をつけた。
…あ。
「おいしい!」