頭の上から降ってきた声に、思わず顔を上げた。

ばちっと目が合って、先輩が「ユッキーでも緊張するんだ」と楽しそうに笑う。


図星を指されて、ぼっと頬が熱くなる。
…やっぱり、わかっちゃうものなんだ。



「緊張することないよ。タメだと思って」

「いっ、いや…!そういうわけには」

「ずっと行きたかったカフェがあるんだけど、男一人じゃ入りづらいから付き合って欲しいんだ。俺、実は甘党で」


私の緊張をほぐすためなのか、本心なのかわからないけど、先輩はずっと甘いものが好きだという話をしていた。

その横で「はい」「あ、そうなんですか」「へぇ」と、全然話が盛り上がらない相槌を打つことしかできない。





興味がないわけじゃないのに。
…あ、また、「そうなんですか」って言っちゃった。これで何度目よ。

なんて自分の中で勝手に騒いでいた。


もっと気の利く返事が出来たら。
もっと会話を広げられたら。
そう思うのに全然できなくてもどかしかった。




――友達も彼氏もいなくて、バイトもしてないから話題がない。

合コンではそれを嫌だと感じたことなんてなかったのに、
生まれて初めて後悔した。



でも、先輩はよく話す人で、話が尽きないから退屈しなかった。