――困ったなぁ。
今朝から、もう10回はメールを読み返している。
珍しく、机に着いたまま携帯を眺めっぱなしの私のもとに、美奈子が寄ってきた。
「おはよー。ユッキー、どうしたの」
「あっ、おはよう」
肩がびくっと跳ねて、慌てて携帯をスカートのポケットにしまう。
あからさますぎだとは思うけれど、とっさの反応。
当然、美奈子は訝しげな顔で聞いてきた。
「どしたの、迷惑メールでも来た?」
「あ、うん。そうなの。なんか、変な出会い系のサイトからメールが来てて」
「ふーん」
幸い納得したらしく、美奈子はいつものように自分の携帯に目を落とした。
メールか何かはわからないけれど、何やら打ちながら
「拒否してもしつこいときあるから、あんまり続くようならアドレス変えなよ」
とアドバイスをくれた。
「うん。ありがとう」
とりあえずそう笑顔で頷いて、心の中でため息をつく。
…困ったなぁ。