大学の校門まで走った時に、ちょうど1限の開始を告げるベルの音が聞こえた。
それと同時にズボンのポケットが振動して、慌てて足を止めた。
「…あ」
メールが一件。
どきどきしながら開いて、差出人の名前を見てさらにどきっとする。
マリナさんだった。
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蒼ちゃんゴメンネ(T_T)
ご家庭の様子はどうですか?
ウチを使ってもいいけど、ユッキーと相談してね。
なるべく早くおうちに帰りなよ。(笑)
ごめんね、忙しくてなかなか会う時間は取れないかも。
ラメールのコーヒーがまた飲みたいな。
☆マリナ☆
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読み終わったあとは、嘘のように体の熱がふっと引いた。
…そうか、まだ会えないのか。
がっかりして一度携帯を閉じるものの、気になってもう一度開く。
最後の一文に目が行く。
ラメールのコーヒーがまた飲みたいな。
今日はバイトの日だし、基本的にテイクアウトはしてないけど、特別に持って行ってあげようかな。
喜んでくれるかわかんないけど。
なんて考えながら大教室に向かって歩く。
もちろん遅刻だった。