「私、蒼ちゃんのことは犬だと思うことにしたから」
……へ?
思わずぽかんと、口を開けてしまう。
い、ぬ?
「犬?ワンちゃん?」
「そう。そうでも思わないとやってられない。
マリナさんが戻ってくるまでなら、いてもいいよ。でも戻ってきたら、三人で住むのはごめんだし、さすがに気持ち悪いから出てってね」
ユッキーはぴしゃりとそう言い放つと、キッチンに入っていった。
「はっ、はい」
その勢いには勝てなくて、直立不動の体制になる。
…我ながら、情けない。
父親の機嫌も、数日もすれば収まるだろう。
来週にはまた研修があるし、こんな居候ライフを何日も続けているわけにもいかない。
――なんか今、自分の将来とかがまったく見えない。
なにやってるんだろーな俺。
『孤独に耐えられない人はだめだよ』
5つ下の女の子の言葉が、こんなにも心に突き刺さる。