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誰もが夏休みを待ち構えていた。
というよりは…秋を待っていた。
そんな、暑い季節だった。
私はきっと、ずいぶん不機嫌だったように思う。
「絶対そうだって。だってあの先輩明らかにユッキーのこと見てたもん」
クラスメートの美奈子(みなこ)が、興奮気味に目を光らせながら言った。
手を机について身を乗り出すその勢いに、ちょっとばかり面食らう。
「そ、そうかなぁ…」
「あのね、ユッキー以外全員気付いてたから!なんでそう鈍いかなぁ。…いーなー、羨ましい!」
美奈子はポニーテールの髪を軽く揺らしながら首を横に振って、ため息をついた。
そして私の前の席に腰掛ける。
甘いバニラの香りがふわっと漂う。
でも私はあの先輩はタイプじゃないよ。
そういうことは言っちゃいけないとわかっているから、なるべく言葉を選んで笑顔を返す。
「でも美奈子は美奈子で、いい感じだったじゃん」
ギロリと、美奈子の瞳が動く。
あ、しまった。失敗した。