「ひっ」

暗がりから漏れたその声に、体がびくっと跳ねた。

パチン、と電気を点けると、その声の主はソファーに横たわっていた。



「いったー…意外と鞄て重いんだな」


「…な、なんでまた…」


頭を擦りながら起き上がった三木蒼太を睨み付けた。
鞄を拾ってから、再び近距離から投げつける。


「いたっ!なにすんのユッキー」

「なんでまだいるの!本気でここに棲みつく気!?」



頭に寝癖がついている。
ぴん!と間抜けな方向に跳ねた伸びかけの前髪を撫でつけながら、三木蒼太は眠そうな声を出した。

「人を幽霊みたいに言わないでよ」


…幽霊よりタチが悪い。


私はソファーの下で拾った鞄を抱えて、もううんざりだという表情を見せた。


「マリナさんは今日もいませんよ。
見たでしょ、昨日のメール」