あとは毎回驚かされる私の気持ちももう少し考えてもらえれば、申し分ないのだけど。



「…俺ね、もうどうしようもない馬鹿なんだよ。恋に自分を見失ってさ、勉強にも集中できない。しまいには親に叱られて家出するし」


三木蒼太は両手で紅茶のカップを包みながら、ため息をついた。
そして顔を上げて、困ったように笑う。


「だから、帰る場所がないんだよね」
















「…篠原さん!」


誰かに名前を呼ばれて、私の回想はそこでストップした。

屋上のドアを振り向くと、見たことのある人が立っていた。

背が高くて手足の長い、ブレザー姿がよく似合う人。



「…中川、先輩」

「あ、覚えてくれてたんだ」


ダークブラウンの髪に、すっと通った鼻筋、切れ長の目。
容姿では確かにこないだの合コンメンバーの中で一番目立っていた。


中川先輩はこちらに向かって歩いてくると、フェンスに腕をついて、座り込んでいた私を見下ろした。


「サボり?篠原さん不良だね」