私のあまりに慣れた対応に、彼は呆気に取られた表情になった。

「どうぞ」と私が紅茶を勧めても手を伸ばさない。
しばらく何かを考え込んだあと、少し戸惑ったように口を開いた。


「マリナさんは…その、よくあるの?…こういうことは」


「はい。しょっちゅう」


間一髪入れずにそう答えた。
夢を見せる気にはならない。
そのほうが、可哀想だし。


「先月の頭までは、同じ会社の人と付き合ってたんですよね。家には一回だけ来たかな。その前は、確か友人の紹介で知り合った公認会計士。これも1ヶ月持たなかったみたい。その前は…まだ聞きたいですか?」

「…いや。もう充分」


それ以上前の記録はよく覚えていない。
それぐらい回転が早いのだ。

三木蒼太の沈んだ肩を見ると、少し胸が痛んだ。
私が悪いわけじゃないのに。