――あの、知らない携帯番号は中川先輩からだったらしい。
いつの間にか私の携帯番号が彼に渡されていた。
橋渡しとなったのは、美奈子だった。




「ね、ちょっと!」


朝学校に着くなり美奈子が席に駆け寄ってきた。
私は荷物を机に置きながら、首を傾げた。
なにかしたかな、と。


「かかってきた?」

「何が?」

「何がって、電話!中川先輩からよ」


そんなに急き立てるような口調で言われても、なんのことかさっぱりわからない。
頭が回らない。
私は一瞬だけ目を閉じて、記憶の渦の中を探った。

…なんとなく覚えのある出来事に辿り着くまで、かなり時間がかかった。

なんせ、それは昨日起こった出来事の中では一番といっていいぐらいどうでもよくて、全然重要じゃなかったから。



「…あの電話、あの先輩からだったの?」