だから何よ。
なんて、素っ気ないふりをしながらそう答えた。

彼…三木蒼太の目が更に大きくなった。


「そうなんですか。…なんか、似ているなとは思ったんですけど、びっくり。娘さんがいることは知りませんでした。マリナさんは、とても若いから」

「それで、あなたは」


私は痺れを切らして、軽く首を振った。
少しじれったくなった。

だめだ。
私はやっぱり、この人のようなのんびりとした話し方は出来ない。



「私のことはあとです。勝手に家に入って来たんです、今すぐ通報したいぐらい。そうならない前に答えてください。
あなたは、なんなんですか。いったい」



彼は少しだけまたためらいの表情を見せたけれど、意を決したように私に再び目を向けた。
そして、きゅっと結んでいた口を緩めた。


玄関で向かい合って、微妙な距離を保ったまま。
きちんと閉められていないドアの隙間から生ぬるい風が吹いてくる。